ビジネスBD、経済専門書、自己啓発雑誌類を現金へ

社員それぞれが意味や価値を持って働くことを軸とし、組織と個人の「パーパス」を重ね合わせながらいきいきした職場をつくることを提唱する一冊です。本書で著者の丹羽真理氏は、かつてミッションやビジョンと呼ばれてきた理念よりも、その背景にある「本質的な目的＝パーパス」を見つめ直すことこそが、働き方改革の本質であるとしています。

序章では幸せに働くことこそ経営の核心であるという視点を示し、第2章で幸福感が仕事のパフォーマンスに与える影響を、具体的な調査データをもとに分析しています。たとえば「幸福度が高い社員は生産性が約12％高く、創造性が3倍にもなる」という示唆があり、ポジティブな感情が視野の広がりや離職率低下といった成果にもつながるとしています。

第3章では個人のパーパスと組織のパーパスの一致が鍵であるとし、この一致が社員のエンゲージメントや生産性を高める構図を論じています。また第4章では「働くことの幸福」を企業戦略としてどう組み込むか、自社の実践事例を交えて解説しています。

後半ではCHOという新職種の理論と実践を通して、誰がどのようにして組織内の幸福をデザインし、導いていくかを具体的に示しています。役職でなくても職場のリーダー一人ひとりがCHO的になれると主張しています。インタビューや事例が多いため読みやすく、自社の制度設計や職場文化の再構築を考えているリーダー層には示唆深い内容になっています。

著者自身はコンサルティング会社でCHOを実践してきた経験をもとに、自身がスタッフ部門へ異動し「意義を共有できなかった」時に幸福感が失われた体験から、Purposeの重要性を実感してきたと語っています。

本書が提供するのは単なる理論ではなく、Purposeの定義・測定手法、組織へ浸透させ共感を生むプロセス、CHOの役割設計や育成、幸せと業績をつなげる実践フレームです。単なる幸福論でも組織論でもなく、Purposeを起点に経営と個人の幸せを両立させるための包括的マネジメント手法が提示されています。

最後にこの本は「社員の幸せ」が企業強化につながるという主張に留まらず、幸福と業績を両立させるための明確なフレームと実践ステップを提供しており、組織の文化改革や人材育成、リーダーシップ戦略に悩む企業にとってきわめて実用的なガイドとなっています。

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