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ポール・ギャリコの同名小説を原作とし、宝塚歌劇団雪組によって舞台化された作品です。演出は木村信司が手がけ、2021年5月から6月にかけて宝塚バウホールおよびKAAT神奈川芸術劇場で上演されました。

物語は、魔術の都マジェイアに現れた青年アダムが、言葉を話す犬モプシーと共に手品師試験に挑むところから始まります。アダムのトリックは誰にも解明できず、彼が「ほんものの魔法使い」ではないかと噂され、街全体を巻き込む騒動へと発展していきます。

主演の朝美絢は、無垢で純粋な魔術師アダムを演じ、その妖精的な魅力を存分に発揮しています。彼の演技は、観客を物語の世界へと引き込む力を持ち、特にプロローグでの歌唱は印象的です。

モプシー役の縣千は、犬の仕草や鳴き声を巧みに再現し、観客から高い評価を受けています。彼の演技は、舞台上での存在感を際立たせ、物語にユーモアと温かみを加えています。

ジェイン役の野々花ひまりは、初々しさと清楚さを兼ね備えた演技で、アダムとの関係性を丁寧に描いています。彼女の存在は、物語に深みを与え、観客の共感を呼び起こします。

舞台美術や衣装も見どころの一つであり、ファンタジーの世界観を色鮮やかに表現しています。大道具や小道具の工夫により、観客は魔法の世界に引き込まれる感覚を味わうことができます。

作品全体としては、ファンタジー要素を取り入れつつも、人間の心理や社会の在り方について考えさせられる内容となっています。アダムの存在が引き起こす騒動を通じて、未知や異質なものへの恐れや、それに対する人々の反応が描かれています。

宝塚歌劇団雪組の魅力を存分に味わえる作品であり、ファンタジーと現実の狭間で揺れる人々の心情を繊細に描いています。観客は、魔法のような舞台演出とともに、深いメッセージ性を感じ取ることができます。

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