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講談社の児童向け小説レーベル講談社青い鳥文庫より2025年11月12日に刊行された作品で、著者は甘雪 こおり、挿絵担当はhimesuzです。物語は「人狼ゲーム」をモチーフとしたサバイバルストーリーで、主人公ハヤトたち参加者が理不尽で危険なゲームに巻き込まれながらも、生き残りと勝利をめざす緊張感のある展開が特徴となっています。

舞台は「炎界ムスペルヘイム」と呼ばれる、山々が噴火し溶岩が流れ落ちる過酷な地獄のような異世界です。この世界では「昼のゲーム」である「終末の日」が行われ、参加者たちが狼陣営か否かを巡る駆け引きと心理戦に巻き込まれます。かつては互いに願いや思惑を抱えていた参加者たちが、一時的に団結を試みるも、昼のゲームで「狼」の巧みな読みと策略により翻弄され、想像をはるかに超える絶望的な状況に追い込まれてしまいます。主人公ハヤトは世界を元に戻すべく奔走するが、先の読めない事態が次々と襲いかかります。読者は限られた情報と直感、仲間との信頼を頼りに「生き残り」を賭けた決断をしなければなりません。

構成はまず「上」篇として本作が刊行されており、下巻は続巻として2026年1月15日に発売されます。下巻では主人公たちの戦いがさらなる激化を迎え、「炎魔」の正体や「狼」「火妖精」といった存在の本質が明らかになります。狼を召喚し人をあざむく炎魔との攻防、人間の狂気と葛藤、そしてハヤトともう一人の鍵となるキャラクター、カリュウとの感情的な衝突や救いをめぐるドラマが描かれます。物語後半は一瞬の油断も許されない緊迫の展開が続き、読者は先の読めない結末に引き込まれる構成となっています。

この作品は「小学中級から読める」文体で書かれており、登場する漢字にはすべてふりがなが付されています。そのため児童だけでなく、幅広い年齢層で楽しみやすい作品となっています。一方で内容は安易なライトファンタジーではなく、心理戦、裏切り、生存のための選択といったシリアスなテーマがしっかり描かれており、単なる「子ども向け冒険譚」に留まらない奥深さがあります。

挿絵を担当するhimesuzは、ライトノベル挿絵の経験が豊富で、本作でも登場キャラクターや世界観をビジュアルで効果的に補強していることで没入感を高めています。甘雪こおりの作風とhimesuzの挿画が融合することで、緊迫した「人狼ゲーム」という設定が持つ恐怖とドラマ性が鮮やかに描き出されている点も本作の魅力といえます。

「読みやすさ」と「重厚な世界設定」「心理戦の緊張感」を両立させた作品で、子ども向けとして手に取りやすく、なおかつ読後に人間の弱さや仲間との信頼の大切さをあらためて考えさせられる、ただのゲームものには飽きた人にもおすすめできる一冊と言えます。

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