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諸星 大二郎氏が執筆した「妖怪ハンター」シリーズのひとつで、神話・民話・怪異譚を巧みに折り重ねた怪奇作です。物語の舞台となるのは、海流の作用で様々な「もの」が漂着する忌ケ浜。この場所に高校生の大島と渚、そして妖怪ハンター稗田礼二郎が交わることで、水と雪、そして官能が交錯する怪異の世界が展開されます。

本作では、「わたつみの神の国より流れ着く妖しき舟。底なしの冥き淵より、濃霧をまといて古の邪念と妄執が、おぞましき姿で甦る」という紹介文が示すように、神話的スケールの怪異が「水」のモチーフを中心に描かれています。 主人公の稗田礼二郎が禁断の書を開くことで、神話と民話が交響し、古代からの怨念や妄執が形を変えて襲来します。

シリーズ第三弾にあたるこの巻では、水と雪という対象が視覚的・象徴的な意味を持っています。水泡とともに浮かび上がる「禍々しき神々」が、物語を通じて描かれ、読者に対して恐怖と畏怖、そして官能的な雰囲気を同時に提示しています。 また、主人公の高校生カップルの視点が絡むことで、怪異譚ながら人間ドラマとしての側面も併せ持っています。

本書は文庫判として発行され、電子版も存在します。紙版は2005年12月13日に発売されており、320ページ構成です。 諸星氏の描く妖怪観・神話観がしっかり息づいており、彼の他作品と同様に「怪異を通じた人間の根源的恐怖」がテーマとなっています。読者が日常から非日常へと引き込まれていくプロセスが丁寧に描写されているため、単なる怪談以上の深みがあります。

評価・感想を確認すると、読書サイトでは登録数がそれなりにあり「評価53％」といった数字も見られます。 つまり、好みが分かれる作品ですが、これは怪異ものとしての強い作風や物語構造の特異さが影響していると考えられます。神話的・民話的設定を怪談に取り込むスタイルに抵抗を感じる読者も少なくないようです。

まず「水」「雪」「舟」といったモチーフに注目することで、物語内で繰り広げられる怪異の暗喩や、稗田礼二郎というキャラクターが触れる「禁断の書」の意味合いがより明確になります。怪異のヴィジュアル・雰囲気を味わいながら、同時に神話的構造や人間の奥底にある「妄執」というテーマにも意識を向けると、理解と味わいが深まります。

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