ギャンブルBDやカジノゲームなどが売れます

文化人類学者ナターシャ・ダウ・シュールが執筆し、日暮雅通が翻訳した書籍である。ラスベガスを中心に行われた長期のフィールドワークを通じて、ギャンブル依存症が個人の意思の問題ではなく、設計された環境やテクノロジーによって引き起こされる現象であることを明らかにしている。

著者は、スロットマシンをはじめとするギャンブル機器が、プレイヤーを「マシン・ゾーン」と呼ばれる没入状態に導くように設計されていることを指摘している。プレイヤーは時間や金銭の感覚を失い、機械との一体感を感じるようになる。プレイヤーの行動を制御し、依存症を助長する要因となっている。

また、カジノの物理的な構造やインテリアデザインも、プレイヤーを長時間滞在させるために工夫されている。例えば、窓や時計のない空間、迷路のような通路配置、心地よい照明や音響効果などが挙げられる。これらの要素は、プレイヤーの時間感覚を麻痺させ、ギャンブル行動を継続させる効果がある。

さらに、ギャンブル機器のソフトウェアやアルゴリズムも、プレイヤーの行動パターンを分析し、報酬のタイミングや頻度を調整することで、依存症を引き起こす仕組みが組み込まれている。これにより、プレイヤーは勝利の快感を追い求め、損失を取り戻そうとする心理に陥りやすくなる。

ギャンブル依存症が個人の弱さや意思の問題ではなく、環境やテクノロジーによって「デザインされた」結果であることを示している。ギャンブル依存症の予防や治療、さらにはギャンブル産業の規制や倫理的な問題を考える上で重要な示唆を与えている。

また、ギャンブル依存症の問題を通じて、現代社会におけるテクノロジーと人間の関係性についても考察している。特に、デジタル技術やアルゴリズムが人間の行動や感情に与える影響について、深い洞察を提供している。

ギャンブル依存症の問題を多角的に捉え、社会的、文化的、技術的な側面から分析した貴重な研究成果である。ギャンブル産業や依存症対策に関心のある読者にとって、重要な示唆を与える一冊となっている。

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