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本売る日々の参考買取価格

◎参考買取価格は新品同様の状態を前提としています。

◎買取時は、状態や需要、在庫数等を再考慮して査定します。

◎参考買取価格は常に変動しているため、目安とお考え下さい。

[文庫]本売る日々

2025年6月に発売です。

[著者や編集者など]

・青山 文平

参考買取価格は190円です。

2025年9月24日時点の参考買取価格です。

時代設定は江戸の文化・文政期で、物語は地方の村々を本屋であり行商人である主人公平助が巡ることから始まります。平助は「物之本」と呼ばれる、仏書・漢籍・儒学書・国学書・医書など、いわゆる「学術書」にあたる書物を扱い、ただ読み物・娯楽本とは異なる、知識や教養を求める書物を届けて回る存在です。

本書は三編からなる中編集で、第一話「本売る日々」、第二話「鬼に喰われた女」、第三話「初めての開板」という構成です。第一話では、小曾根村の名主・惣兵衛が後添えに迎えた少女との関係と、見せてほしいと頼まれた画譜が二冊なくなっていた事件をめぐって、登場人物たちの心の動きや対応が焦点になります。平助はこの事件をきっかけに、名主惣兵衛の「本に対する想い」や村での知識・文化への価値観を観察します。 第二話では八百比丘尼伝説をはじめとする伝承・伝説と、人間の復讐や秘密、義理や感情といった人間ドラマが絡む話になっています。第三話「初めての開板」では、平助の夢でもある「版元として本を出版すること=開板」がテーマになり、名医や医書をめぐる議論、医者の矜持などが描かれています。医療の実状や書物を通して人々の暮らしや信頼がどのように形成されていくかが丁寧に描写されます。

作者がこの物語で特に意図したことは、江戸時代の農村や在に住む名主など、地方の指導層が知識・文化を求めていたこと、本=書物を通じて地域社会に広がる「知」のネットワークを浮き彫りにすることです。富の源泉を農に求め、そのなかで生まれる余裕や知識欲の芽を見のがさず掘り起こす視点が特徴的です。平助の語りを通じ、読み手は「読書・学問・医術・国学」といった、現代では専門的・学術的とされる文化が、日本の地方でも根を張っていたことを知ることができます。

文章の特色としては、穏やかながら細部にわたる描写力、人物心理の微妙な揺らぎを捉える筆致が挙げられます。たとえば第一話で画譜がなくなるという事象をめぐって、「誰が」「どうして」だけでなく、「見ていた者の心」「見られることの恥や期待」がどのように交錯するかが静かに描かれます。第三話では医師の言葉が印象深く、医療・知識の伝承や公開性、人々が共有する学びとしての医学のあり方についても現代にも響く考察が含まれています。

青山文平作品の中でも、本書は「型にはまらない時代小説」の好例と言えます。人物が必ずしも伝統的な善悪やヒーロー・ヒロインの構図に縛られず、静かな揺れや疑問を抱えながら日常を生きる人々が主人公であり、その生活が知的にも情緒的にも読み応えがあります。読むことで得られるのは、ただ時代風俗の知識や歴史の面白さだけではなく、今も普遍的な「学び」「他者との対話」「知の共有」「信頼」の価値だと言えます。

文庫、新書等の買取について

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