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宮島未奈による青春小説で、2025年6月25日発売の新潮文庫レーベル作品です。本作は中学二年生から高校三年生までの成瀬あかりを描いた全六編からなり、地元・滋賀県大津市を舞台としている点が大きな特徴となっています。

物語は「ありがとう西武大津店」と題された短編で幕を開けます。閉店間近の地元百貨店・西武大津店に、中二の夏を「捧げる」と宣言した成瀬あかりが毎日通い、ローカルテレビの中継に映るという挑戦を始める場面から始まります。彼女は「西武」への思い入れを語りながらも、その行動は周囲から奇異にも映りますが、成瀬自身は臆することなく突き進みます。こうした彼女の突拍子もない振る舞いが、本作を通じて貫かれる個性として読者の視線を引きつけます。

続く短編集では成瀬の「変人ぶり」がさらに深掘りされます。たとえば漫才コンビ「ゼゼカラ」でＭ1を目指したり、高校入学式では坊主頭で現れたり、200歳まで生きると豪語したりと、その奇抜な行動は枚挙に暇がありません。これらは単なるユーモアにとどまらず、彼女の意欲と信念の現れとして描かれ、読者に強い印象を与えます。

本作は全六章で構成され、それぞれが異なる視点で語られます。成瀬を取り巻く友人や家族、地元の人々の目を通じて彼女の異質な魅力が浮かび上がり、最終章では初めて成瀬自身の視点が登場します。そのギャップが巧みに描写される構成は、読者に「誰が語るか」によって印象が左右される複層的な魅力を伝えています。

舞台として描かれる大津市のローカル色も鮮やかです。閉店間近の西武大津店、琵琶湖のクルーズ船「ミシガン」や地元駅・膳所駅、競技かるた部など、リアルな描写が随所に散りばめられています。これにより読者はまるで作品の「聖地巡礼」に出かけたかのような臨場感を味わえます。

本作は2024年に第21回本屋大賞大賞、さらに坪田譲治文学賞とR18文学賞大賞など多数の文学賞を受賞し、シリーズ累計125万部を超えるヒットとなっています。この実績が示す通り、広く読者の共感を呼び起こす魅力があります。

巷では、思わず共感や笑いを誘うエピソードが続々と登場するとの声が多く、特に成瀬の「訳の分からない行動」がかえって勇気や元気を与えるとされています。「やってみたいをやるだけ」という精神が、読者にとって忘れかけたワクワク感や希望を取り戻させるという意見もあります。

ただし一部では、全体のまとまりに物足りなさを感じるという声もありました。短編集ゆえ展開が淡白に感じられることや、最終章でようやく成瀬自身の素顔が見える構成に賛否があったとの指摘があります。

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