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モンゴル考古学の専門家である白石典之氏が、30年以上にわたる現地調査と最新の考古学的成果をもとに執筆した通史です。モンゴル高原を舞台に、青銅器時代からモンゴル帝国の興隆まで、遊牧民の歴史を多角的に描いています。

本書は、遊牧民が築いた王朝の興亡を、考古学的視点から詳細に解説しています。匈奴、鮮卑、突厥、ウイグル、契丹、モンゴルなど、歴代の遊牧王朝がどのように形成され、発展し、変容していったのかを、遺跡の発掘成果や出土品の分析を通じて明らかにしています。特に、近年のゲノム解析や歯石分析などの科学的手法を取り入れ、遊牧民の生活や社会構造に新たな光を当てています。

著者は、遊牧民の歴史がこれまでの文献中心の歴史観では捉えきれない側面を持っていると指摘し、考古学的アプローチの重要性を強調しています。例えば、匈奴の支配層が西ユーラシア系であった可能性や、モンゴル帝国の首都カラコルムの実態など、従来の歴史書では触れられてこなかった事実が、本書では詳細に述べられています。

また、遊牧民の生活様式や文化が、現代社会にも影響を与えている点にも注目しています。モンゴル高原を「ユーラシア大陸の心臓部」と位置づけ、遊牧民の動向が広範な地域に影響を及ぼしてきたことを示しています。さらに、現代の遊牧民が新たな技術を取り入れ、伝統と革新を融合させながら生活している様子も紹介されています。

本書は、遊牧民の歴史を通じて、世界史の中での彼らの役割や影響を再評価する試みです。考古学と最新の科学的手法を駆使して、遊牧民の実像に迫る内容は、歴史学や考古学に興味を持つ読者にとって、非常に有益な一冊となっています。

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