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韓国で製作されたクライム・ドラマ映画です。舞台は暴力と貧困が蔓延する地方都市。主人公の18歳の少年ヨンギュは、継父からのＤＶに怯えながら義理の妹ハヤンを守ろうと暴力沙汰を起こし、高校を停学となります。夢だったオランダ移住も叶わず、バイトを首になったヨンギュは地元犯罪組織のリーダー、チゴンに身を寄せ、盗みを手伝うことで徐々に認められていくものの、やがて組織の冷酷な掟に背くことになります。　 監督・脚本は、長編映画として本作がデビューとなるキム・チャンフン氏であり、韓国映画界の新鋭として注目されました。

本作の大きな見どころのひとつは、ソン・ジュンギがこれまでのイメージを一転させ、裏社会で凄まじい存在感を放つチゴン役に挑んでいる点です。脚本を読んで役を引き受けたという背景もあり、これまでの華やかな主演路線とは異なる作品への情熱が感じられます。

またホン・サビンにとっては映画初主演であり、社会の底辺に取り残された少年の痛みや葛藤を体現しています。レビューでは「暴力ノワール」という表現も用いられており、荒んだ環境で生きる若者たちの心情が生々しく描かれています。

監督キム・チャンフン氏は、モーテルの受付をしながらシナリオを書いたというエピソードもあり、本作に込められた「底辺からの湧き上がる怒りと希望」というテーマが、ただの犯罪ドラマ以上の社会的な厚みをもたせています。

単なる犯罪エンターテインメントではなく、青年と裏社会の男が交錯することで見えてくる「抜け出せない社会」と「あがこうとするけれどあがれない現実」を重層的に描いています。例えばヨンギュは「オランダへ移住する」という夢を抱えているものの、それ自体が遠すぎる希望として機能しており、結局は地元の犯罪組織に頼らざるを得ないという構図が、社会の構造的な閉塞感を象徴しています。

またレビューでは、暴力そのものがドラマの根幹ではなく、「仕方がない」というあきらめの言葉が頻発することから、韓国映画ならではの社会的現実と若者の孤独が映し出されています。

暴力と夢破れた少年、そしてその少年を受け入れた裏社会の男という二人の主人公が、互いの存在を通じて「生きる意味」を探る濃密なドラマです。俳優ソン・ジュンギの異色の役どころ、新人俳優ホン・サビンの存在感、そして新鋭監督キム・チャンフンの真摯な視点が相まって、容易には忘れがたい作品となっています。深い社会的テーマと人間の奥底にある希望の微かな灯が交差しており、韓国映画の現在地を知るうえでも興味深い映画です。

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