経済専門書、経営BD、自己啓発CDなどが査定可能

組織のチームが持続的に高いモチベーションと成果を発揮できるよう、「スキルマネジメント」と「エンゲージメント」の両輪を制度・仕組みとしてデザインすることを目指した実践書です。中小企業を中心とした導入事例をもとに全面改訂され、特に「スキルマップの作り方」に焦点を当てて体系的に解説しています。

本書ではまず、従来の評価制度や人事制度が抱える問題点を整理し、人に頼る属人的な運用から脱却して、組織的で再現性のあるマネジメントの構築が必要だと提示しています。既存書「従業員エンゲージメントを仕組み化するスキルマネジメント」でも同様のテーマが扱われており、経営と従業員、上司と部下の溝を架け橋する手法としてスキルマネジメントを位置づけてきた背景があります。改訂新版の中心部分として、スキルマップ設計と運用のノウハウが丁寧に記されています。スキルマップとは組織が重視すべき能力要素を可視化し、個人とチームのギャップを明らかにして育成や配置に反映させる枠組みを指します。

本書は複数企業の実践例をもとに、現場ですぐ使えるテンプレート、設計上のポイント、定着させるための仕掛けを手引きしており、管理職・リーダー向けの実務書としての側面を強めています。目次構成を見ると、導入準備・現状分析・設計・定着・運用・見直しという流れで進み、段階的にステップを踏んで制度を育てていくための道筋が示されています。各章にはチェックリストや注意点も用意されていて、読み手が自社の文脈にあてはめて実践できる工夫がなされています。改訂版ではAIやデータ活用といった近年の潮流も反映され、スキルマップの策定を支援するツール活用法や、評価制度における「裁く」から「育てる」への転換論が強調されています。

本書の強みは、理論と実践をリンクさせている点です。抽象的なマネジメント論にとどまらず、実際に現場で起こる抵抗や運用上の失敗例、それを乗り越えた工夫を紹介することで、読者に「自分の組織でも可能だ」という実感を与える構成になっています。加えて、制度設計後の見直しやPDCAを回す姿勢を重視しているため、長期運用を前提とした設計スタンスが明確に立っている点も特徴です。導入初期のハードル感を減らす観点から、段階導入や試行制度から拡張していく方法にも触れられています。

ただし、すべての組織課題がスキルマネジメントとエンゲージメント構築だけで解決できるわけではないという視点も暗に示されています。たとえば文化・風土変革、リーダーシップのあり方、経営戦略との整合性といった要素は読者の実践的判断が求められる部分として残ります。読後には「自社で取り入れるには何が足りないか」「最初の一歩をどう設計すべきか」という視点で読み返すと、より実務で生きる教材料になる書籍と言えます。

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