自己啓発BD、ビジネスDVD、資格DVD類を買取

本書の特徴は、実際の粉飾事案を取り上げ、「企業の活動」がどのように財務諸表の各科目に反映されるかを具体的に示す点にあります。どこが見せかけであり、どこが実質を表しているかを見分ける力を養えるよう構成されており、粉飾のパターン、会計方針の変更、注記など細部の読み取りに重点があります。

構成は３部に分かれています。第Ⅰ部では財務三表と株主資本等変動計算書の基本構造と役割を確認し、貸借対照表・損益計算書・キャッシュフロー計算書ごとに科目の意味とその繋がりを押さえます。第Ⅱ部では「利益の捻出」と「利益の抑制」をテーマにし、粉飾が起こる動機、手法、そして注記や会計方針の変更などがどのように表に現れるかを実例を用いて見せます。第Ⅲ部では中小企業に特有な財務諸表のリスクやチェックポイント、会計指針上の留意点などを扱い、減価償却・引当金など制度的な側面からの見方を補強しています。

増補改訂版として、初版発行以降に新たに明らかになった粉飾事例が追加されています。そのため、現在の会計慣行や不正のやり口を反映しており、過去事例だけでなく最新トレンドへの対応力も備えています。またコラムが多数あり、中小企業の実態や会社・役員間取引など現場での問題点を掘り下げているため、実務に役立つ知識を得やすい内容です。

読むメリットとしては、財務諸表を表面的に眺めるだけでなく「疑って読む」力がつくこと、粉飾のメカニズムを理解することで将来のリスクを予測できるようになること、金融機関などの審査・融資判断に携わる人間にとって重要な着眼点を備えられることがあります。一般の経営者や会計初心者にも有用ですが、やや中級以上の知識があるとさらに深く学べます。

気をつけたい点は、実例中心ゆえにケースごとに事情が異なるため、そのまま他社に当てはめられるとは限らないこと、また会計基準・税法の改正などにより過去の粉飾事例の法的・制度的背景が変わっている可能性があることです。総じてこの書は、「どういう場所・科目・注記に不正の兆候が出るか」を知りたい人、決算書の読み方を実践的に鍛えたい人にとって非常に示唆に富む一冊です。

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