宙出版や恋愛小説やサスペンス等を買い取り

ブラック・ダガー・ブラザーフッドシリーズ第七弾にあたり、その世界観は異界のロマンスと深い葛藤を描くパラノーマル・ロマンスの代表作とされています。世界中で読者の熱狂的支持を受けたシリーズの一部として、その魅力を放っています。

物語は麻薬王リヴェンジという存在から始まります。彼にはヴァンパイアの亜種、シンパスとしての血が流れていることが苦悩の源となり、仲間からも距離を置かれて孤立しています。人の心を操る能力を持ち、邪悪とみなされ追放される運命にある彼は、ある日貴族モントラグからヴァンパイアの王ラス暗殺を命じられます。脅迫に屈し妹や部下を守るためその指令を受け入れますが、自分に宿る衝動を抑えるために通う診療所で看護師エレーナに出会い、惹かれてゆきます。この葛藤と禁断の恋が物語の核心を成しています。

原題はLover Avenged。シリーズものゆえに登場人物たちの背景や世界観がすでに積み上げられた物語に厚みを与えています。ジェー・アール・ウォードはボストンの医療施設でチーフ・スタッフとして勤めたのち、ロマンス小説を執筆し、2005年に発表した「黒き戦士の恋人」が全米で大ベストセラーに達した作家です。南部アメリカ在住で、夫とゴールデン・レトリバーと暮らしているというプロフィールが紹介されています。

翻訳は安原和見が担当しており、異世界のロマンスでありながら日本語でもその緊張感や感情の機微が伝わるような訳しぶりが期待されます。内容にはヴァンパイアと人間の境界を描きつつ、禁断の愛と忠誠への葛藤の深層を描写しています。構成や描写の緻密さに、シリーズ既読者にも十分な満足感を与える一冊です。

版元は二見書房から文庫レーベル「ザ・ミステリ・コレクション ロマンス・コレクション」として刊行されています。シリーズの先行する巻とのつながりを感じさせつつ、個別の恋愛ドラマとしても完成度をもたせた構成が印象的です。現代ロマンス小説に求められる読みごたえとキャラクターの深さを兼ね備えている作品です。

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