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視覚を通じた鑑賞に留まらず、仏像の存在感や空間の空気まで「感じられる」ことを意図して構成された美術書です。約120体の仏像を収録し、既存の番組テキストには登場しない写真も多数加えて、総写真点数は約180点に及びます。掲載仏像は視線と同じ高さ、実際の寺院の照明や環境に合わせて撮影されたものが多く、鑑賞する者に仏像との距離を自然に縮める臨場感を与えます。

構成は仏像の種類ごとに整理されていて、「三尊像」「如来」「菩薩」「明王・天部」「羅漢ほか」というチャプターに分かれ、その中で代表的な仏像が紹介されています。例えば薬師寺の薬師如来三尊像や東大寺の盧舎那仏、唐招提寺の十一面観音立像、醍醐寺の五大明王像など広く知られた名品が含まれている一方、地域的に希少な磨崖仏なども取り上げられ、バランスが取れた選定となっています。

解説は簡潔で的確にまとめられていて、仏像の歴史、種類、造形技術や材質、さらには制作過程を扱う章まで備えられています。こうした知識面の補強によって、ビジュアルだけでなく理解の深化もサポートされています。

「間近で見たような緊迫感」「光輪や薄衣の描写が神々しい」などの声が寄せられています。明王や天部の炎の表現や、西域の名残を感じさせる仏像の風情にも注目が集まっています。

他の写真集と比較すると、本書は写真家の強い作家性よりも鑑賞者の日常的な視線や感覚を優先しており、雑誌的な柔らかさと静かな雰囲気が魅力とされています。土門拳のような個性派写真集とは一線を画す設計が、静かに心に響くスタイルとして好意的に受けとめられています。

仏像をただ「見る」のではなく、「感じる」ことへと昇華させることを目指した新たなビジュアル体験型の一冊です。鑑賞初心者にも経験者にも新しい目線を届ける内容です。「感じる」鑑賞の可能性を提示する点で、写真集としてのみならず、鑑賞の道具としても意義ある構成といえます。

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