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坂月さかなによる初の商業作品集で、漫画・カラーイラスト・散文を通じて「ある宇宙」の旅を４章構成で描いています。第１章「星旅風景」は多数のイラスト作品から成り、読者の想像力を刺激する情景描写で構成されています。第２章「不眠少年　月へ行く」と第４章「トビアスたちの旅」はイラストにショートストーリー文が付く形式で、絵本のように静かで切ない物語を紡ぎます。第３章「星旅少年」は短編漫画として、主人公が惑星を巡る「観光旅行」を通じて出会いと別れを経験するストーリーになっています。

本書は夜を基調にした深い青と、時折差し込む赤をアクセントとする色彩で統一されていて、その美しさは「夜の世界に誘われる」と評されるほどです。読者は深い余韻とともに「静かな旅」を味わえる構成になっていて、装丁にも凝っておりカバー下まで気配りが行き届いています。全体的に青を基調とした幻想的世界観がSNSでも話題になり、読む者をいまだかつてない浮遊感へと誘います。

評価面では各所から高い支持を得ていて、短編とイラストの組み合わせにより構成された構造が「完璧」と称賛されています。絵柄の繊細さや色彩設計、ストーリー性のバランスが優れている点も評価されていて、特に短編集だと思いきや実は時系列で繋がっている点が興味深いという意見もあります。

権威ある国際賞である「ボローニャ・ラガッツィ賞　コミックス・ヤングアダルト部門2023」で最優秀賞を受賞しており、日本国内でも「第25回文化庁メディア芸術祭マンガ部門」の審査委員会推薦作品に選ばれています。この受賞は坂月さかなが日本と欧州の漫画表現の融合に挑む新世代作家として注目されている証左でもあります。

世界感としては人がまばらで夜の闇が支配する静謐さが基調となっており、登場人物や幽霊のような存在が感傷的な影を落とします。記憶や別れ、終末といったテーマが穏やかな筆致で描かれていて、現実と幻想の境界を漂うような詩的表現が印象に残る構成です。

旅の記録と記憶の断片を集める構造で、章を進めるごとに読者は深く物語に没入していきます。続編である「星旅少年」シリーズとのリンクも意識されており、本書は物語世界の入口としても機能します。

以上のように美しいビジュアルと詩的な物語性、受賞歴によって裏付けられた作家としての完成度が見事に融合しており、SFや宇宙モチーフが好きな読者にとって新しい感覚の「夜旅絵本」として体験できる作品です。

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