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ノンフィクション作家・梯久美子が手がけた評伝であり、アンパンマンの生みの親であるやなせたかしの人生を深く掘り下げています。本書は、NHK連続テレビ小説「あんぱん」の放送に合わせて刊行され、やなせの知られざる側面を明らかにしています。

やなせたかしは1919年に高知県で生まれ、幼少期に父を亡くし、母の再婚により伯父の家で育ちました。東京で美術を学んだ後、徴兵され中国戦線に赴き、戦争の過酷な現実を体験しました。特に飢えの苦しみや弟の戦死は、彼の創作活動に大きな影響を与えました。戦後、高知新聞社で出会った女性記者・暢さんと結婚し、再び上京して漫画家を目指しました。多くの挫折を経て、ついにアンパンマンを生み出しましたが、当初は大人たちから否定的な反応を受けました。それでも子どもたちの支持を受け、アンパンマンは国民的キャラクターとなりました。

本書では、やなせの詩人としての側面にも焦点を当てています。彼が編集に携わった「詩とメルヘン」や、アンパンマンの主題歌「アンパンマンのマーチ」の歌詞には、戦争体験を通じて培われた深い哲学が込められています。特に「たとえ いのちが終るとしても」という一節には、自己犠牲と真の正義についての彼の考えが表れています。

やなせの人生は、幼少期の孤独や戦争の悲劇、不遇の時代など、数多くの困難に満ちていました。それらの経験が、飢えた人々に食べ物を分け与えるというアンパンマンの行動理念に繋がっています。また、妻・暢さんとの関係も温かく描かれており、彼の創作活動を支える重要な存在であったことが伝わってきます。

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