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1989年シーズンにフォーミュラ1で戦ったロータス101を徹底的に掘り下げた専門誌ムックです。本誌は当時のレースの戦いを単なるデータ以上に多角的に描き、名ドライバーや技術者へのインタビュー、詳細なマシン分析を通してその背景に迫っています。特に1989年シーズンはかつての名門チーム・ロータスにとって苦難のシーズンであり、ホンダエンジンの供給が終わる中でジャッドV8エンジンに切り替えたロータス101が持つ性能的な限界と、それを乗り越えようとした技術陣とドライバーの努力が本誌の中心テーマです。

本誌には中嶋悟と鈴木亜久里という当時のチームメイト同士が36年の時を経て語る対談も収録されており、現場で感じたことや互いの存在が当時のチームに与えた影響について深い話が展開されています。この対談を通して、ロータス101が直面した非力なエンジンと戦い、入賞を得ることが困難だった状況の中で、ドライバーとして何を考え、どのようにモチベーションを保ったのかが鮮明に浮かび上がっています。 本誌がユニークなのは技術面だけでなく人間ドラマにも光を当てている点です。技術陣へのインタビューでは、テクニカルディレクターとしてチームに加わったフランク・ダーニーの視点や、設計に関わったマイク・コフラン、内部構造の再配置を望んだティム・フィーストなどが登場し、マシンが直面した設計上や開発過程の苦闘が語られています。またエンジン供給元であるジョン・ジャッド自身によるコメントがあり、5バルブエンジンの採用がもたらしたメリットと限界について技術者の立場から解説しています。

ロータス101の戦績としてはシーズン通算で顕著な勝利や表彰台こそなかったものの、1989年オーストラリアグランプリでの豪雨の中で中嶋悟が記録した最速ラップが伝説的なエピソードとして語り継がれており、本誌でもこの「雨のナカジマ」と称される瞬間が大きく扱われています。読者は当時のマシンの細部や仕様変更の過程、各レースごとのモディファイ事項を豊富な写真とともに確認できる内容になっています。

本誌はオールカラー96ページ構成で、ロータス101のGalleryページや詳細ファイル、ドライバー視点の考察記事が収められ、単なるスペック紹介だけでなく、当時の雰囲気やチームの心理状態までを読み解ける構成になっています。F1ファンにとっては1989年シーズンを振り返る貴重な資料でもあり、ロータスというブランドが置かれた現実と挑戦の記録を深く理解する助けとなる一冊です。

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