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山際康之氏が執筆した本書は戦前プロ野球の黎明期に球団オーナーとして関わりながら、日米開戦という国家の重大局面に深く巻き込まれた三人――有馬頼寧、正力松太郎、小林一三――の人生と葛藤を描いた歴史ノンフィクションです。大政翼賛会の要職に就いていた三者が、それぞれ趣味、宣伝、商売と異なる動機で野球界を支えたのち、戦時下の状況とどう向き合ったのかが巧みに掘り下げられています。

本書は真珠湾攻撃を契機とする日米開戦を軸に、プロ野球選手の兵役や戦死、戦場での活動など戦争の現実が球界にもたらした影響を丹念にたどります。その過程で球団を率いた三人が経験した葛藤と苦悩に焦点が当てられています。特に終章では巣鴨プリズンでの服役、戦犯容疑、公職追放といった戦後処理も描き、有馬の繊細さと正力の迫力、小林の現実主義が戦後の運命を分ける様が鮮やかに示されています。

著者はこれまで野球史に関する多数の著作を発表してきた人物ですが、本書ではオーナー側に視点を移すことで新境地を開いています。戦争によって翻弄された人びとのドラマから、時代に翻弄されながらも人生を模索する姿が浮かび上がります。

読者レビューでも「有馬頼寧が球団オーナーだったとは驚きだった」「戦地に向かった選手の姿とともに戦時下の球界の実像を知り、胸が熱くなった」「政治と野球という意外な重なりが興味深い」といった声が寄せられています。

野球史と政治史が交差する一点に光を当てる単なる野球の解説にとどまらず、戦争という時代にあって己の選択と責任を問い続けた人びとの群像劇として読む者に深い余韻を残します。

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