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捕手を中心とした「投手対打者」の攻防に焦点を当て、戦略的視点を立体的に紐解いていく戦術書です。144ページのB5判という体裁ながら、全編にわたって3D図解を駆使し、局面ごとの配球や守備・走塁などを多角的に可視化しています。

第1章では投手と打者の基本的な勝負構造を整理し、正しいストライクゾーンの認識法からカウント別の攻防構成に言及しています。第2章では打者の動作解析に着目し、そのステップやバッティングの回転動作を要素分解し、いかにして打者の軸を崩し打ち取るかを丁寧に解説しています。

第3章においては、投手へのアプローチを深掘りし、例えば来る球を予測する打撃イメージ法や相手投手のタイプを見極めて狙い球を絞る戦術を示しています。実戦で使える具体的な配球パターンや狙いどころが明示されており、打者視点からも投手視点からも極めて有用です。

第4章では走者の有無や塁状況に応じた意思決定を扱っています。走者なし・一塁ありなど典型的な局面において、守備側・攻撃側それぞれのフォーメーションやシフト戦術も含め、コーチング現場ですぐ応用できる内容となっています。

著者の高見泰範氏は元東芝監督で、捕手としての実績はもちろん、1992年バルセロナ五輪で日本代表主将として銅メダル獲得というキャリアを誇ります。現場知見に基づく説得力ある戦術論が、本書全体の信頼性を支える大きな柱です。

本書の特徴は、平面的な説明に留まらず立体的視点で戦術を提示している点にあります。平凡な図示や記述ではなく、3Dグラフィックを介しながら場面を空間的に把握させる試みが随所に見られます。そのため初級者から上級者、さらにはコーチにも視覚的理解を促し、戦術読みの習慣形成に資する構成となっています。

ただし本書はあくまで「野球の戦い方」のセオリーを示す教科書的な位置づけです。最新のセイバーメトリクス的データ分析や論理の深化には深入りせず、実践的な図解による技能伝承に重点を置いています。そのため、従来型の動作解析や戦略理解を望む層には非常に適しますが、数値分析による戦術裏付けを求める読者には補足が必要かもしれません。

野球における配球・打撃・守備・試合運びを多角的に学びたい方にとって、本書は視覚的かつ実践的な戦術理解を促す一冊と言えます。

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