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編集・ライター中野慧氏による光文社新書として2025年3月18日に刊行された評論書です。タイトルの挑発的なフレーズは、一見すると表面的ですが中身は深く骨太な歴史社会学的視点による野球文化論で構成されています。

同書は冒頭で「野球部＝体育会系」へのステレオタイプ的批判、例えば「根性論」「性差別」「上下関係の厳しさ」「女子マネへの容姿ジャッジ」など代表的な論点を取り上げつつ、これらの印象が当事者抜きの粗い語りであることを指摘しています。スポーツジャーナリズムが既存のスポーツ礼賛に偏りがちであることにもメスを入れており、「野球文化が今の形になった理由」をミクロとマクロの視点から再構築する野心的な試みを志しています。

内容は八章構成で、第１章・第２章で現代の体育会系野球文化とSNS上に流布されるイメージの乖離、第３章以降で歴史的焦点を展開します。第３章ではアメリカにおける野球神話の創出、第４章で一高を舞台とした戦前のエリート文化との接続、第５章で天狗倶楽部と野球害毒論争を契機とした甲子園野球の成立、第６章では帝国主義下の野球の位置づけ、第７章で戦後の武士道とスポーツジャーナリズムの相克、第８章でスポーツ・野球の価値論として現代的な問いを提示しています。

著者自身が草野球を継続する当事者であり、熱狂者やマスコミを距離を置いて批評する立場から、文化系とされる読者にも届くように構成されている点が特徴です。一部では「タイトルほどに副題の「解剖」までは踏み込んでいない」との声もありますが、社会的背景や歴史的脈絡を織り交ぜることで、単なる批判を超える示唆に富んだ書として評価されています。

専門的な評論文体のため読書慣れしていない読者には読み応えがあるとの指摘があり、それゆえに「易しいだけの入門書ではない」という印象も抱かれやすいようです。

本書は「野球部はクソ」という挑発的な切り口を入り口として、野球文化の根源的構造と社会的意義を丁寧に解明する試みであり、体育会系と文化系の接点に立ちつつも、その溝を埋める視座を提供しています。そのため野球好き、歴史好き、社会学的興味を抱く読者にとって多層的な語りが楽しめる一冊になっています。

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