オーケストラCDやブラスバンドDVD等が買取可能

本書は合唱に取り組む個人および団体が「どこを直せば上達するか」を具体的に指し示すことを意図した解説書です。著者は長年合唱界で指導・研鑽を重ねてきた田中信昭氏で、実践的なノウハウに基づくアプローチが随所に見られます。新版として2024年10月18日にリリースされており、旧版の内容を基盤としながら改訂や再構成が施されています。

本書の構成を押さえておくと、まず身体と発声の基礎に関する章が複数並び、姿勢・呼吸・筋肉制御といった 「身体をよい楽器にする」 視点からの指導が前半に据えられています。具体的には「立ち方のヒント」「呼吸のヒント」「身体をしなやかにする手法」「身体の機能発達ポイント」など、一歩ずつ身体感覚を整えて発声へ結びつける流れが見て取れます。

中盤以降は、合唱ならではの 「アンサンブル力」 や 「表現・練習法」 に焦点が移ります。各パート間・個人間のバランスをどう取るか、練習を効率的かつ楽しくする工夫、さらにはステージ本番に向けた準備法などを 「100のコツ」 という形式で細かに切り分けて解説しています。器楽と異なり「音だけでなく言葉を運ぶ」「全体でひとつを生み出す」ことに重点が置かれており、表現のリアリティを引き出す技術論も多く含まれています。

また巻末には著者が関わった合唱作品のリストも付されており、読者が指導・演奏に使えるレパートリーの視点も兼ね備えられています。旧版には「お悩み相談コーナー」「合唱の歴史を駆け足でたどる章」など、理論・実践・背景をつなぐコラム的構成も確認できます。

本書を活用する際、効果を高めるための読み方を提案します。まず身体・呼吸系のコツをじっくり読み、それぞれを実際に試すことが肝要です。「コツを理解する」だけで終わるのではなく、小さな実験＝トライアルを重ねながら身体感覚を更新していくと、発声との結びつきが強くなります。アンサンブルや表現の章は、団の練習の中でテーマを絞って取り入れるとよいでしょう。たとえば「今週のコツをひとつ選んで全員で意識する」「練習の最初にコツ確認タイムを設ける」といった運用が現場では有効です。さらに、著者の提示するレパートリー一覧を参照しながら、自団の演奏曲目と対応させることで「実用性」が高まる使い方になります。

一方、読者からの感想には「練習前に音取りを完璧にしておくべき」「直前だけの参加では力は伸びない」「聞こえている音を自分の声で再現するには反復が必須」という言葉があり、おおむね本書の実践性に対する信頼が見られます。

新版として発売されているという事実から、初版を読んだ方にも見直し・再活用の価値があると考えられます。演奏力・表現力を高めたい合唱団、指導者あるいは参加者にとって、緻密な技術と現場視点を結びつけた「道しるべ」のひとつとして使える良書と判断できます。

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