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NHK交響楽団首席クラリネット奏者・松本健司によるクラリネット入門から応用までを網羅した実践的教本です。楽器を持つ前の心構えから組み立て、吹き方、合奏時の奏法まで段階的に解説されており、特に「中音域の音程を安定させる」「よく通る音を出す」といった奏者が抱えやすい課題の解決にも焦点を当てています。

A5判で104ページと取り扱いやすいサイズ感ながら、内容は濃厚です。第1章では楽器の構造や手入れ方法を丁寧に紹介し、第2章ではアンブシュアや呼吸法といった演奏の土台を築くための準備運動までカバーします。第3章以降はロングトーン、タンギング、フィンガリングを基本から応用まで体系的に扱い、第4章には忙しい日常でも取り組みやすい「10分でできる目的別練習」が盛り込まれており、音色改善、音程調整、速いタンギングなど、特定技術の向上に直結する短期トレーニングを多数収録しています。第5章は合奏時の楽譜読み、音楽記号の理解、アンサンブル力強化といった集団演奏に役立つ内容を含んでいます。

付録も充実しており、「クラリネットお悩み相談室」「運指表」「楽譜読み替え早見表」といった実践的資料が別冊形式で添付され、学習効率を高める工夫が随所に施されています。指導経験豊富な著者による確かな内容と、現場感あるアプローチが融合しており、これからクラリネットを本格的に始める中高生や経験の浅い部員などが、短期間で技術的に成長できるように設計されています。

他のクラリネット教本と比較すると、本書はヤマハミュージックメディア社から2016年に刊行され、今なお「クラリネット教本として定番の一冊」として第2位にランクインするほどの評価を得ています。同ランクの他社出版の入門書と比べて、合奏や実践に強い構成が特徴です。

松本健司氏はパリ国立高等音楽院卒、NHK交響楽団首席を務める実力派奏者で、トリオ・サンクァンシュや室内オーケストラARCUSのメンバーとしても精力的に活動しています。教育者として東京音楽大学、洗足学園音楽大学などで教鞭をとり後進の育成にも注力しており、本書に反映される現場視点と実践的ノウハウはその豊かな経験に裏付けられています。

独特なまとめとして、本書は「持つ・吹く・合奏する」という流れが自然な形で繋がっており、基礎から合奏参加まで一貫したスキルアップを目指す奏者に適しています。練習法に明確な目標と時間が設定された設計があり、忙しいクラブ活動や部活復帰の際にも取り組みやすい構成です。美しい音色や安定した音程を目指す際、本書の実用性は高く、奏者自身が問題意識を持ち、自律的に改善できるよう導く点が際立っています。

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