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作家 朔ヒロによるオメガバースを舞台としたＢＬコミックで、前作「ルビーレッドを噛み砕く」の続編にあたる一冊です。βの養護教諭・牧瀬と、元教え子でΩの朱音という、年の差・先生と生徒だったという関係性を背景に、二人が「恋人として」「同棲を考えるパートナーとして」どう関わり、成長していくかを丁寧に描いています。

物語における設定として、朱音には「フェロモンが色とりどりの結晶として見える」という特異体質があります。その視覚的な表現が、物語の世界観に彩りを加えています。牧瀬はβですが、αに近い性質を帯びており、周囲からの期待や自己への葛藤、そして十歳年下の朱音を支えるという立場の中で揺れる心情が丁寧に紡がれています。ある日牧瀬から「もっと一緒にいたい」という同棲の提案が持ち上がり、浮かれる朱音とは対照的に、関係に潜む問題や二人の立ち位置の違いにも目が向けられていきます。

また物語は新たな登場人物として、牧瀬の兄・翔が現れ、黒い結晶を身にまとったαとしての存在感を放ちつつ、弟を守る強い執着と優しさを見せるキャラクターとして作用します。牧瀬の幼少期からのコンプレックスや、兄・弟という構図、βが抱える「このままで自分でいいのか」という想いが掘り下げられており、朱音が単に守られる存在ではなく、牧瀬の不安に向き合い支える姿も印象に残ります。

作品トーンは「せつない」「あまあま」「コミカル・シュール」とされており、恋人編として甘さもありつつ、二人が抱える立場ゆえの障壁や嫉妬・不安といった内面がしっかり描かれています。特に朱音の「見えてしまう結晶」が大きな意味を持つ場面では、喜びだけではなく恐怖にも近い感覚が描かれ、作者ならではのオメガバース設定の深みが感じられます。

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